「ゴジラ KING OF THE MONSTERS」を鑑賞する。

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「GODZILLA KING OF THE MONSTERS」
「GODZILLA KING OF THE MONSTERS」
配給:東宝
制作:レジェンダリー・ピクチャーズ/ワーナーブラザース
原作:マックス・ボレンスタイン/マイケル・ドハティ/ザック・シールズ
脚本:マイケル・ドハティ/ザック・シールズ
監督:マイケル・ドハティ
2019年5月31日封切り

エドワーズ版ゴジラの続編だ。
間に「キングコング髑髏島の巨神」というのがあるらしいが観ていない。
今回は何故か当のギャレス・エドワーズが一切関わっていないが、映画は東宝怪獣映画への愛に満ち溢れた傑作だった。このマイケル・ドハティという監督は全く知らないが怪獣バカと言う点ではギャレス以上の大馬鹿だろう。

以下ネタバレ有り。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
話はゴジラとムトーが決戦した晩から始まる。
あの対決に巻き込まれ離散したラッセル一家が今回の主役だ。
世間には大怪獣の存在を知ってて隠していたモナークへの批判があふれているが、実はモナークが監視している大怪獣はムトーやゴジラだけではなかった。確認されているだけで17体。ほとんどは休眠状態だが、それを叩き起こして怪獣大戦争を引き起こそうとモナークに襲いかかる環境テロリストが現れる。
テロを率いる元軍人のジョナが狙うのはラッセル夫妻が製作した怪獣を音波でコントロールする装置オルカ。これを使って南極で発見された最大の怪獣キングギドラを起こそうというのだ。時同じくして芹沢博士が監視していたゴジラが数年ぶりに活動を開始、向かうは南極だ。ギドラの復活を感じたのだろうか。芹沢とモナークはこれを阻止できるのかッ!

…ラッセル夫妻はとくに活躍しませんね。まぁ奥さんの方は実は怪獣大戦争の立案者だったという、悪い方で話を引っ張りますが。ご主人はねぇ…。酒に溺れてたというだけあって陰が薄い。モナークや軍にたてついて娘探しに奔走しますが、ゴジラを助けようとしているモスラの姿を見て考えを改めます。浅はかな人ですネ。二人の娘マディソンは出来物のお母さんにくっ付いていますが、ラドンを起こすのに地元の市民を見殺しにしたお母さんに疑問を抱きます。
そんなラッセル一家の葛藤を横糸に、描かれるのは大怪獣の大決戦です。今回はECMをかけてくる様な掟破りな生物も居ないので、米軍大活躍かと思いきや、あまり思い切った飽和攻撃を行いません。行えないのですが、怪獣決戦に水を差したくなかっただけなのかも知れません。

ドハティ監督は本当に怪獣映画が好きな様で、東宝のみならずガメラやガッパなどからも引用を行なっていて、それが盗んだというより明らかなリスペクトなので、日本の特撮映画がこれほど愛されているのだなーと感慨に耽りました。

これが逆なら、日本の映画人は欧米のSF映画にこれほどのリスペクトを行えているかと。
アニメなら十分に恩返し出来てそうですけどね。

いや面白かったです。ありがとう、マイケル。


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「シン・ゴジラ」を鑑了する。

「シン・ゴジラ」パンフ
「シン・ゴジラ」
配給:東宝
制作:シネバザール
原作:香山滋
脚本:庵野秀明
監督:樋口真嗣
2016年7月29日封切り

なんだか即座に上映が終了しそうなので、あわてて庵野ゴジラを観て来ました。
総監督は企画会議で面白い日本映画を作ろう!とおっしゃったそうですが、
観ている間中、過去の名作邦画の数々を彷彿とさせてくれました。
「犬神家の一族」や「ゴジラ」「日本のいちばん長い日」
「機動警察パトレイバー」など。
そして素晴らしい映画の必須条件、勝利する脚本!のことなど考えていました。
今回、庵野さんはスーパーバイザーであるだけでなく、
脚本を書かれたというので、
非常に気にはしていたのです。
良い映画は常に脚本がすでに勝利している。
このひとが「宇宙戦艦ヤマト」を撮ってくれたら、
どれほど素晴らしいモノになるだろうかと。

率直に云って大変面白かったです。

以下激しくネタバレ有り。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
冒頭、漂流船が東京湾内に浮いていると云うので、
海上保安庁?が調査に向かうところから、
映画は始まります。不安感を煽る上手い導入です。
当然の様に不安は的中し、湾内に異変が発生。大きな熱源が海中にあるらしい。
交通繁華な東京港のことです。直ちに現場レベルから国政上の問題へと発展します。
この対応策を練る政府の描写が素晴らしい。
最初大したことなかろうと、常識論にあぐらを掻いている閣僚たちが、
次第に本気になり始め、出来る範囲の最善を尽くし出す。
にも関わらず事態の進展は人間の予測を超えて拡大し、
とうとう巨大生物の都内侵攻を許してしまう。
お殿様のごとく「良きに計らえ」で済ましていた総理も
部隊創設以来初めての自衛隊による武力行使の決断を迫られてから、
変わっていく。
観る人によっては愚かな判断と取られそうな最初のヘリ攻撃。
避難民がまだ居ると聞いた総理は迷うことなく攻撃の中止を命令する。
立派だ。俺はあんたなら支持するよ!
その所為で千載一遇のチャンスを失ったかもしれないが。
そして第二次ゴジラ鎌倉上陸。
このデザインの変更巧いなぁ。勝てる気がせんものな。
自衛隊の飽和攻撃をものともしない巨体。
絶対防衛線が破られたことによる政府機能の立川への移転。
「都内にまだ国民が残っているのに!俺が逃げられるか!」
冒頭のヘナチョコ総理が嘘の様だ。
安保協定に則った米軍によるバンカーバスター?攻撃には、
さしものゴジラと言えど血反吐を吐くが、そのことが却って東京を火の海に。
粉骨砕身、国家と国民を守るべく尽力してきた内閣もこの攻撃で塵と化す。
この後、臨時内閣を押し付けられる総理も良かった。
人事入閣と揶揄され昼行灯扱いの凡夫。その人が、
自衛隊、極東米軍の失敗から国連軍による熱核攻撃を強制され、
否やと言えぬ現状に鬱屈としながら、ゴジラを生物学的に停める作戦の時間稼ぎの為に、
フランスの大使に深々と垂れる頭!

大の大人が全力で戦っている姿がここにはある!

まぁ新世紀エヴァンゲリオン「決戦、第3新東京市」の二番煎じじゃんと、
思わない事もなかったが。


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「GODZILLA ゴジラ」を鑑賞する。

…これは「ゴジラ」と云うよりは「ゴジラの逆襲」なのでは…。
ゴジラの追っかけをしてるモナークと云う組織のことをもっと知りたい。
面白かったかと問われれば面白かったが、怪獣はパシフィック・リムの
方が怖かったかなぁ…。もうちょっと整理して欲しかったなぁ。

以下いささかネタバレ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

かつてのエメリッヒ版と違い、唯物主義のアメリカを批判するのは
諧謔にあふれたフランス人ではなく、渡辺謙さん扮するその名も芹沢だ!
キリスト世界では神はヤハウェただ一柱だから、水爆でも死なない
生物界の頂点ゴジラを神とか王とか呼ぶのはおかしい気もするが、
ここでは太平洋艦隊の提督ですらそこに疑義を差し挟まない。
アメリカも大らかになったものである。

ゴジラ映画と云えば大活躍する日本の防衛軍だが、アメリカ映画である
今作で、そんなおいしいところは日本に持って行かせない。
モナークが秘密裏に接収した怪獣ムトーの逃走を理由に静岡を米軍が占拠。
日米安保はどうなっているのだろう。
怪獣ムトーのECMで虎の子の電子戦戦闘機が木の葉の様に落ち、
誘導ミサイルも使えず、長年の訓練で鍛えたプロフェッショナルが
あっさりと殺戮されていく快感。
一体この損耗を埋め戻すのに何年かかることか。
対ECM装備の原潜なら海中から狙えたんじゃないかなぁ?

怪獣と対峙する前線が壊滅するのは一作目からのお約束。
大怪獣に対する人間の無力感を否が応でも感じさせる。
初代では避難してゴジラの進軍をただ眺めるしかない市民と
燃える街を見てちくしょう!ちくしょう!と泣く少年のつぶやき。
今作ではムトーとゴジラがバトってる現場へ落下傘降下する
特殊部隊のちっぽけさが印象的でした。
どれほど無力であろうとも、
一歩でも前進する気概が、実にアメリカ的でいいな。

しかしもう少し話が整理出来ないものだろうか。
芹沢は被ばく三世らしいのにゴジラに心酔してて、話を引っ張ってくれない。
妻を亡くして真相追求に人生を賭す技師ブロディは中盤で死んじゃうし。

ガメラは守護神らしいので人間を意識してても構わないのだけど、
ゴジラには都市とか人間の営みとかまったく意に介さない傲岸さが欲しい。
ゴジラが他の怪獣を目の敵にするのはただ単に目障りだから!

なるほどアメリカとは相性悪そうだ。


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