記事タイトル:生ビール始めました。 


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お名前: ななかん   
そんな看板を見て、おや?と思った。
生ビールが季節を問わず飲めるようになって、ずいぶん久しい。
70年代では生ビールは夏限定の贅沢品だった。
なんで夏だけだったのか。
そう云えば牛乳も60年代には宵越しの出来ない食品だった。
朝買って、夕方まで保てばよいほうだった。
だから、色々加工してた。
冷蔵庫の普及が観念を書き換えたのだ。
古代バビロニアの人々も、きっと自分たちほど幸せな者は
かつてなかった、と繁栄を謳歌したことだろう。
本当に我々は恵まれている。
そしてすぐに忘れるのだ。
世界は無慈悲で理不尽であることを。

まぁ、かつて愛したに違いない女を、お腹の赤ん坊ごと殺して
自宅の庭に埋めるような、甲斐性のない大馬鹿野郎は論外として。
新しい環境に期待と不安を、若々しい胸にいっぱい詰めこみながら
へし折れた金属のフレームの下で、圧死を余儀なくされる無念たるや。
今朝までは平凡たる幸せを噛み締めていたはずの家族の慟哭たるや。

便利さにかまけて、いつの間にか忘れてしまう。
時間を無駄遣いしている自分の醜さを。
首根っこ掴まれて「お前の時間を俺によこせ!」と無念の亡霊たちに
つめよられても、これは俺の分、と胸を張って云えるのか、俺は。
あんたらのためにも精一杯生きていますと、幾多の骸、屍の主に。

[2005年5月1日 21時54分56秒]

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