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「茄子 スーツケースの渡り鳥」DVD |
面白かったー。
前作の「茄子 アンダルシアの夏」はどうしても原作の面白さと比較してしまって、
いまひとつ映画としての醍醐味を味わえなかったけれど、二作目の今作は漫画の方が
前作を上回る面白さを探求出来なかったおかげか、独立した物語として素直に鑑賞できた。
なにより舞台が日本であるし、凡俗と天才の違いをストレートに主題としているのが
身近な問題として強く心に迫った。
主人公のチョッチやペペは選手になるぐらいだから、決して凡庸な肉体の持ち主ではない。
それでもレースに向けて必死にトレーニングを続け、身体をしぼりあげて、ようやく平均点に
到達する、というような十羽ひとからげなロードレーサーだ。
同じチームの頼りになる先輩で、カリスマ的な魅力を持った英雄マルコの死によって彼らは動揺する。
国民の英雄がまた限りなく孤独で凄惨な人生を過ごしていた事を知って。
何の為に走るのか?
ポイントを稼ぐため、金のため?
自転車が好きだから?
「俺は勝ちたいンだッ!」から?
「強い奴には独特のオーラがある。俺やお前にはねぇーもんだ。」
それでも走り続ける。何の為に?
乾燥した欧州の風土から湿潤な亜細亜のコースへ。
走るしか能のないチャリンコ野郎は今日もスーツケースを担いで
遠征するのである。
男なら泣かずにおられようか。
[2008年1月8日 15時9分47秒]