記事タイトル:「借りぐらしのアリエッティ」を鑑賞する。 


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お名前: ななかん
最初この制作発表があった時、「借りると称して返さず、あまつさえこれが
なければ生きて行けないわ!と開き直るヒロインか…。ジブリも思い切った
もんだな。」と勝手に感心していたのですが、本編はそんなこともなく、
普通に児童文学でした。

脚本にまだ宮崎駿さんの名がありますが、監督米林宏昌さんはこれが劇場
初監督。作画畑叩き上げの監督さん、は多いんですけど、なんか演出と云う
よりは表現にこだわっちゃうんですね。

以下ネタバレ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
冒頭、主人公らしき男の子がベンツに乗って登場するんです。
これがまた使い込まれたベンツの感じが出てる。
今時のお尻がツンと上がったデザインじゃなくて、昔風のテレンとした
ベンツ。「なんだよ。ブルジョアのボンボンかよ。」と反発が起きますが、
家が裕福なのは、何もこの子の責任じゃないなと気を取り直すと、そもそも
運転しているのは祖母らしいご老人。
成る程。運転手が雇えないのか、居てもこの子の送迎には出されないのだな、
となんとなく境遇が見えてきます。
案の定、病気の子供。田舎の屋敷に静養にやってきたのです。
そこで出会うのはこの世ならざる小人の姿。
スタンダードだ。

話がセオリー通りなのに目を引くのは、やはりその徹底したリアリズム描写。
水が表面張力で固体であるかのごとく振る舞う様や、空気に弾力すら
感じる密度の差。小人から見れば世界はこんな風に見えるのだなぁという
説得力。
よく出来てる。
でも子供の描写に気を割き過ぎなのか、中盤から話を引っ張るお手伝いさん
の動機がさっぱり見えず。単にネズミを退治したいじゃダメなのかなぁ。

さらにわからないのがドールハウス。
あれは出来合いのオモチャじゃなくて、この家の主人が小人の為に
オーダーメイドで作った特注品なんだから、住まわせてあげたいじゃない。
だけどお話はリアルにリアルに進むんですよ。

「見ルナのタブー」は古事記にも現れる古典的命題ですけど、だいたい
解決策もやりつくされていて、このお話でもその筋では意外性も何もなく
終わります。
結局の所、よく出来てはいるけれど、目新しい展開は無く、特筆すべきは
視点の大小が生む表現力のみという。

とはいえ、
アリエッティの凛とした立ち姿はきれいだったなぁ。なによりこの娘の
スカートがひるがえるとなんかうれしい。
ジブリ製のアニメには絶えて久しいワクワクだった。
でもそのワクワクがお話の構造を破壊するまでは至らなかった。

ちょっと残念。
[2010年7月28日 22時00分]

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