記事タイトル:「見送りの後で」を読了する。 |
「見送りの後で」 樹村みのりさんの新刊。
[2008年1月16日 9時49分9秒]
朝日新聞社刊、ネムキ増刊夢幻館にて掲載。
比較的最新の樹村さんの作品が読める稀少な本。
よく出版したなー。
もう昔の作品のようにストレートに心に染み入るようなことはなくなったが、
(わたしと樹村さんの人生経験の差によるものと考える。)
安易な結論をもってよしとしない姿勢は健在。
感情論で煽らない作風は今も昔も漫画界の良心だと思う。
だが誘導されることに慣れきった読者には読みづらい不親切な作品と写るのではないかな。
「兄妹の誰も継承しなかったものがある」
軽蔑し、軽んじて来た結果、さて子供になにを残せるのかと考えた時、
実に多くのものを失ってしまったことに気付き、不安になる。
これでよかったのだろうか?
ジャン・バルジャンが最期を迎えるにあたって、リュミエル司教の心に応えられたかどうか。
仏陀が涅槃を迎えるにあたって、人の世の苦しみを少しでも救えたかどうか。
俺は、わたしは、精一杯やったよ、と誰かに報告できるのなら、
人間に取ってこれが無上の幸福となるだろう。