記事タイトル:覚え書き その五「ネットワーク」 


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お名前: ななかん   
電話とは受話器だけのように思いがちだけど、電話線があっての電話サービス。
インフラに裏打ちされてこそ、その真価を発揮する。
それでも初期の受話器は個人でも修理可能な機械だったが、今はその大半が半導体によって
構成され、壊れた時には買い替えとなる。
便利なサービスはその姿のほとんどを暗箱の中に隠してしまい、もはや何故それが動作するのか
一から理解しているのは一握りの技術者のみ、という現実が存在する。
かつて記憶装置の開発とソフトウェアの構築は車の裏と表であり、概ね個人か数人のグループで
両方を兼ねていた。今、どれほどのソフトウェア技術者が半導体の開発に、新たな記憶装置の
発明に意見できるのだろうか。
情報の共有が組織のポテンシャルを持ち上げるのは生物の構造からして当然の成り行きだろう。
全ての国家があらゆる情報を共有するようになれば、全近代的な独裁は維持しにくくなる。
戦争すらおいそれとは起こしにくくなる。
そのかわり、隠しておきたい秘密や塗り込めたい恥辱も衆目にさらされる。
ウィニーは今でこそハッカーの七つ道具のように喧伝され、危険視されているが、言い換えれば
国家が人民に嘘をつけなくなるツールでもあるわけだ。
電子的な情報は書き換えも容易い。
情報であるかぎり、隠匿が難しいというのであれば、おとりの情報や意味の無い情報が意図的に
ばらまかれるようになるだろう。
市民からは書き換えの権限が奪われるかも知れない。
SFではナノマシーンによって生物の相が劇的に変わる世界を予言するが、自己修復のみならず
自己複製するような機械をもはや道具とは云えまい。
しかもその上に乗る情報は容易に書き換えられるのだ。
このような世界では再び不可触な、コードと存在が不可分になるような新たな情報体系が
構築されるのではないだろうか。
[2006年4月20日 10時50分14秒]

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