「日本のいちばん長い日」上巻を読了する。

「日本のいちばん長い日」上巻
「日本のいちばん長い日」上巻
単行本
著者:半藤一利/星野之宣
出版:文藝春秋
初版:2022年7月30日
購入:2022年8月2日
価格:1210円(税込)


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「日本のいちばん長い日」上巻を読了する。」への1件のフィードバック

  1. 読了日:2022年8月21日

    原作も映画(67年版)も観てるが星野之宣版とあっては読まざるを得ない。巻頭黒船来航から章を開ける。帝国軍の成り立ちを説明したのち、昭和天皇の登場だ。皇太子時代、才気煥発、若くして大正天皇の名代としてヨーロッパ歴訪。だがWW1の残火が再び燃え広がる。中国ごとき圧倒して終わると豪語する軍部は十年越しでも戦火を消せず、今またアメリカを砕くと先制攻撃を主張する。「大陸は広いと言うが太平洋はもっと広いぞ」軍部の言い抜けに理を諭すが対欧米開戦。進退窮まって鈴木終戦内閣の発足。7月26日ポツダム宣言は欧米中華の連名で日本に無条件降伏を突きつける。激昂する軍部。不可侵条約を結ぶスターリンのソ連に仲介を頼むが無視され、8月6日広島核爆撃。ソ連参戦。もはや継戦は不可能と宣言受諾を閣議に乗せるが、これにも軍部は反対。国体の護持は当然としてそれを維持する軍隊の保持、つまりは保身を恥ずかしげもなく主張する。彼らの言う国体とは天皇と臣民の総体でなく、形のない神統であり軍はそれを守る為には今上であろうと国民であろうと踏み躙る決意があるというのだ。国民総特攻を敢行すれば可能だと。8月9日長崎核爆撃の事実を見ても意見は平行線を辿り、業を煮やした軍部はクーデターを計画するが、8月14日昭和天皇は御前会議を招集し、全閣僚に宣言の受諾と終戦の決定を勧告し、応じない者には自分が説得する旨を伝える。長く君臨すれども統治せず、政治決定には意見を挟まないという慣習を破っての命令であった。聖断と呼ばれる。自分の処遇を顧みない利他の精神に閣議は屈服する。だが日本の一番長い日はここから始まる。
    血気盛んな若手将校団は柔弱な今上の決定を間違っていると断じ、君側の奸が陛下を操っているとして軍にクーデターの決行を促すが、もはや軍も一枚岩ではなくなった。空襲を防げず市街地を灰塵にされてるのに自分らは安全な堡塁に守られている矛盾に心を痛める東部軍管区司令田中は決起を即しに来た陸軍省将校を怒鳴りつける。「帰れ!」気圧されてたじろぐ将校。もはや司令官クラスは当てにならない。「わかっている」自分たちで「処理」しなければ…。終戦の詔書の作成ではクーデターの企てを知っている阿南陸相が孤軍奮闘していた。明らかな時間稼ぎだったが、その間にも多くの国民が戦火に命を焼かれていた。近衛軍の決起内諾を取った将校団は、終戦の詔がラジオで放送されるという情報を掴み、その阻止に奔走する。
    詔書に署名し陸軍省に帰って来た阿南陸相は驚くべき内実を語る。彼のクーデター計画は今上すら暗殺し内閣を皆殺しにした後、ソ連に北海道を赤化させアメリカと講和して反共国家として生き残るというものだった。だが聖断に感動し人しての格の違いを認めてしまった彼にはそれを実行する気力がなかった…。

    星野さんならではの解釈も交えて描かれる「長い日」。阿南陸相のクーデターは何か傍証があるのだろうか。誰か証言してるのかな?

    星★★★★

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