「日本のいちばん長い日」下巻を読了する。

「日本のいちばん長い日」」下巻
「日本のいちばん長い日」下巻
単行本
著者:半藤一利/星野之宣
出版:文藝春秋
初版:2022年7月30日
購入:2022年8月2日
価格:1210円(税込)


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「日本のいちばん長い日」下巻を読了する。」への1件のフィードバック

  1. 読了日:2022年8月21日

    鈴木総理の仕事は終わった。2.26で暗殺されかけ、取り留めた一命はこの日の為にあったのだ。同じ様に憑き物が落ちた様な顔をした阿南陸相が不明を詫びに総理官邸を訪った。二人ともやり切って死ぬ覚悟なのだ。詔の録音を終えた昭和天皇も同じ思いだったが、戦争は終わっていなかった。
    近衛師団の決起命令を欲して、森師団長を説得するが叶わず凶刃にかける将校団。偽の師団長命令で東部軍も動かすつもりが露見。録音を終えて宮城から出ようとするNHKの職員を押し込めるが、レコードは持っていない。宮内省の侍従に預けたという証言と御璽を管轄する木戸内大臣を確保せんと宮内省に押し入る将校団。この内大臣は木戸孝允の子孫。彼を匿った徳川侍従は尾張徳川家の出だ。
    歴史を知らぬ雑兵にとって宮内省は魔窟であった。まず部屋に書かれている名前が理解できない。何の為の部屋なのか、増築を繰り返した省内は軍隊の好む合理性とはかけ離れており、レコードは遂に見つけられなかった。
    偽の森師団長命令によって今上が寝起きする御文庫にも近衛軍が迫る。空襲でも閉じられた事がない鉄扉が閉められた。
    辞世の句を書いている阿南のもとを将校団は訪ね翻意を促すがその決意は揺るがない。鈴木首相を討とうと自宅を急襲するが取り逃し、家を燃やして気勢を揚げる反乱小隊の上を米軍の爆撃機が睥睨していく。もはや首都圏を守る防空体制は機能していなかった。偽の命令書がバレて連隊長に罵られる将校団。「ただちに宮城から出て行け!叛乱の片棒を担がせよって、死んだ方がマシだ!」
    阿南は腹を切って自決する。武人が一人腹を切って済ませられる状況ではすでになかったが…。御文庫ではどうやって今上を匿うかと思案していたところ、昭和天皇自ら出て行って諭すと言う。今度はそれをお止めせんとならん。放送局では玉音放送の中止と決起の放送を強要するが職員が頑として拒んでいた。「管轄する東部軍の許可がありませんと…」陸相の印璽を手に入れた叛乱軍は今度はそれで偽の陸軍大臣命令書を出し、クーデターの完遂を試みるが、宮城に先着された東部軍司令田中の一喝で引き上げざるを得なかった。事は潰えた。叛乱を鎮圧した田中司令官はこれも不明を詫びて自決。命令書に従っただけの連隊長も行方不明となった。
    正午に玉音放送があるとの予告が全国に流れた。宮城には誰からともなく人が集まり始めていた。広い皇居のそばに来ていては放送は聞こえないと言うのに。叛乱を主導していた若手将校も自決の為に広場に来た。自分の至誠は恥るところなどないと言わんばかりに。
    玉音放送が流れた。日本の敗戦は決定的であり連合国に降伏する、と。
    鈴木内閣は総辞職し敗軍の将と詰られる元総理はお尋ね者のように逃げ回った。
    ポツダム宣言に関わらないソ連は受諾後も侵攻を続け、樺太を含む北方四島を占領し、北海道にも侵攻を企図したが日本の赤化を望まないアメリカに拒否された。戦艦ミズーリ上での降伏調印式。連合国軍による主導で国家を立て直す事となった日本では新憲法が発布された。それは天皇の責任を問わない事を条件に日本を非武装化、民主化する狙いがあった。断罪を免れた天皇は人間宣言を出し、戦争で疲弊した国土を巡幸した。「国民はわたしを許してくれるだろうか?」そんな昭和天皇の前に写真を添えた白木の箱を持って進み出る娘。今上は静かに嗚咽した…。

    天皇を黙らせる仕組みをこさえたのは藤原氏なのではないかな?そして藤原氏にそれを決意させたのが蘇我氏。天皇側もそれが生き残る術だと取ったのだろう。一挙両得。それがわたしの妄想。

    星★★★★

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