「ONCE UPON A TIME IN…HOLLYWOOD」を鑑賞する。

「ONCE UPON A TIME IN…HOLLYWOOD」
「ONCE UPON A TIME IN…HOLLYWOOD」
配給:東宝/SONY/コロンビア・ピクチャーズ
制作:HEYDAY FILMS
原作:クエンティン・タランティーノ
脚本:クエンティン・タランティーノ
監督:クエンティン・タランティーノ
2019年8月30日封切り

これはそういう映画だったのか…。
ワンスアポンアタイムは英語圏の説話の語り出しで、「スターウォーズ」のアロングタイムアゴウと同様の意味を持つ。日本語で言えば昔々あるところにとなる。舞台は60年代末のカリフォルニア、ほぼ半世紀前の昔語りだ。TVで人気が出て、映画俳優に進出しようとして目が出ず、忘れかけられている俳優リック・ダルトンとその相棒でスタント・ダブルのクリフ・ブース。落日の日々を焦燥の中で過ごす二人の横に現れるロマン・ポランスキーとシャロン・テート夫妻。カウントダウンの様に示される月日と日時。
シャロン・テート事件だ。
マンソン・ファミリーによる無差別殺人。
散漫に見えるのはタランティーノ脚本では普通のことだけど、この映画ではさらにとっちらかってる。これがシャロン・テート事件に繋がると分かるのは冒頭かなり過ぎてからだ。落ちぶれてるとは言えセレブな生活を送るリックと駐車場のキャンピングカーで暮らすクリフの貧富の差。同じ様に底辺生活なのに楽しそうにゴミ箱をあさるヒッピーたち。ラジオからはベトナムに侵攻した米軍の戦果が華々しく語られ、ハリウッドは夜ともなればケバケバしいネオンで彩られる。
正直退屈だった。タランティーノはCGを好まないらしく、60年代のハリウッドはわざわざ往来をそれ風に作り変えてロケをしたらしいけれど、美術は「ウォルト・ディズニーの約束」に遠く及ばない。人々の風貌も「アメリカン・グラフィティ」のソレを越えられない。ビジョンが足らない。こちらもその頃のハリウッドを知ってる訳ではないので、そこに住んでたタランティーノのビジョンの方が正しいのかもしれないが。
オッと思えたのはやはり脚本からで、クリフの生活描写だ。家は買えないが犬を飼っているクリフは底辺生活者だが、それを卑下していない。それどころか落ち目のリックを日々励まし、支えている。高慢ちきに描かれた売り出し中のブルース・リーにからまれた時も互角かそれ以上に渡り合う。タフガイだ。ハードボイルドだ。暴力を振るうことを躊躇わないが、頼りにもしない。
なんとなく気脈を通じたヒッピーのプシーキャットに連れられ、若かりし頃撮影でよく通ったスパーン牧場を訪れると、そこはヒッピーの根城に変わっていた。そいつらがいわゆるマンソン・ファミリーだった。牧場主のスパーン老人の安否を訝るクリフ。この不穏さ。よくここであの家に押し入るわな。ベトコンの潜む農家に押し入るのとは訳が違う。今はM-16もパイナップルも手元にはない。

この時のイザコザが後の事件に繋がるが、映画は驚くべき展開で終わる。「イングロリアスバスターズ」を観たひとにはまたか、だろうけれど。
コレ、ハッピーエンドなのかな。なんか怖い。一般受けはしそうにない。


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「ONCE UPON A TIME IN…HOLLYWOOD」を鑑賞する。」への1件のフィードバック

  1. シャロン・テート事件の顛末を知らなければ、普通の展開か…。でもそう言う人は「このお姉ちゃんは誰なの?」となりそう。あと気になったのがひとつ。映画館で自分の出演した映画を観るシャロンが足を前の席に乗せてるシーン。足の裏が普通に汚い。当たり前なんだけど。行儀も悪いよね。
    同じ行動がプシーキャットにもある。ヒッチハイクでマンソン牧場へ戻るシーン。やっぱり足の裏が汚い。わざとか。

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