「一度きりの大泉の話」を読了する。

「一度きりの大泉の話」
「一度きりの大泉の話」
単行本:随筆
著者:萩尾望都
出版:河出書房新社
初版:2021年4月20日
購入:2021年4月23日
価格:1980円(税込)


漫画記事一覧に戻る

「一度きりの大泉の話」を読了する。」への1件のフィードバック

  1. 読了日:2021年4月24日

    文中紹介される竹宮恵子さんの自伝、というのを知らなかったけども一緒に暮らした事もあったという両巨匠がなぜ今疎遠なのかという、萩尾望都さんからの証言。萩尾さんの文章はどれも重くて漫画に比べるとあまり読む気になれないのだけど、本書も重かった…。大泉サロンというのも最近知った呼び方だけど、二度と軽々しく使うまい。よくぞ重い口を開いてくださった。
    私は竹宮先生の作品は多分「ファラオの墓」からだったと思うが、はて萩尾作品の最初はどれだったろう?当時一番好きだったのは「三月ウサギが集団で」という日本の中学が舞台のコメディで萩尾さんのミュージカルみたいな抑揚の効いた描写にしびれて、何度も読み返した。でもやはり最初は「ポーの一族」だったろうか。本書に連載は不人気で単行本初版から三万部に仰天したがそれが三日で売り切れたと聞いて更に仰天したとの下り、理由がわからないとおっしゃってるが、そりゃ男が買ってるからやないですか。別冊少女コミックをレジに持っていくのは人生をレイズしてるような男性読者でもコミックなら「いやボクこの作家のファンなんで!」と堂々買えるのです!単行本の発売がどれほど嬉しかったか!石ノ森ファンだったわたしは当然の様に同じ匂いの竹宮ファンでもあったけど、描線の流麗さ加減では俄然萩尾さんに軍配を上げていたので、段々と萩尾作品に傾倒していたように思う。だがこれも丁度同じ頃に両氏が少年誌に連載を始められた作品「地球へ…」と「百億の昼と千億の夜」ではどう読んでも「地球へ…」の方が面白く、これは映画にもなって劇場へ観に行った。竹宮さんは前年に発表した「風と木の詩」がセンセーショナルな作品で知名度では完全に負けたな、とは思った。でもこれ以降の竹宮作品はほとんど読んでない。「私のための作家」ではなくなったのだ。萩尾さんもこの頃に父親を亡くされ、生前仲良くなかった父を思うのか、観念的な作品が増え足が遠のいた。それでも「メッシュ」「モザイクラセン」「銀の三角」には唸らされた。なんでこんな話を思いつくのか、喰いもんか、食うものが違うのか。「イグアナの娘」でなんか吹っ切れたのかその後は昔の調子が戻った様だったが、絵はすっかり変わっていた。そういう意味では竹宮さんの絵はあんまり変わってないな。
    萩尾さんは24年組という括りも大泉時代を思い出すと、あの大きな変化を自認されてないが(ご自分の年表では里中真知子や青池保子から陸奥A子や田淵由美子に飛ばしてしまわれる。)あの頃確かに質的にも量的にも漫画が少女漫画が大きく変わった。その中心に自分が居た、と今は思えないかも知れないが、歴史はその名を忘れないだろう。
    我を忘れて読んでしまった。重かったけど。

    星★★★★★

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA