「若おかみは小学生!」劇場版を鑑賞する。

「若おかみは小学生!」
「若おかみは小学生!」
配給:東宝/GAGA⭐︎
制作:DLE/マッドハウス
原作:令丈ヒロ子/亜沙美
監督:高坂希太郎
2018年9月21日封切り

原作を読んでいないので比較しようはないけれど、多分TV版の方が原作には近いんじゃないかな、と思いつつ。
TV版はタイトルから連想させる通りにゆるふわな展開で、なんにでも真摯で率直なおっこが幽霊や小鬼の助けを借りて、女将修行に精進する様が描かれる。一癖も二癖もある宿泊客を相手にその問題を解決して、旅館経営のあり方や温泉町の将来像、おっこ本人の将来のあり方などが見えてくる様はまさに少女文庫の名にふさわしい。実際このタイトルと「黒魔女さんが通る!!」はイラストの可愛さも相まって以前から気にはなっていた。
さてその映画版である。公開の時期からして同時期の企画と思えるけれど、TV版の後半に流れる映画版のカットが実に素晴らしくて、TV版のスタッフは嫌だろうなーと思いつつの鑑賞でした。

以下ネタバレあり。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冒頭、TV版では描かれなかった両親の交通事故のシーンが描かれる。ジブリ仕込みのやたら現実感のある風景で描かれる高速道路での衝突事故!
怖いンですけど…。
パンフに監督の言で「対象となる小学生くらいの子供に配慮して抑えめに」とあるけど、このシーンの重さで全体のトーンが下がる。もちろんソレは映画のクライマックスで昇華される重さではあるのだけど、これで対象年齢が二、三年上がったちゃったんじゃないかなと思える。途中で大型トラックとすれ違ったおっこがPTSDから過呼吸を起こすぐらいの丁寧な描かれ様だ。感情移入してる子供も心拍数上がるよそりゃ。しかもこの件でおっこを助けたらしい幽霊のウリ坊が、映画の後半で再びこの事故に向き合わざるを得なくなったおっこの救いに一切ならない。精神年齢が成長してしまったおっこには彼らの姿が見えないのだ。幻想を卒業して現実を生きる姿を描いていると取れる。こういう点も対象年齢が若干上がったと思えるところだ。原作のファンで、おっこの元気な姿を期待して観に来る少女にはいささか世知辛い風景だろう。幸いなことに日曜昼の回にも関わらず、子供の姿はほとんどなく、観ていたのは家族づれ一組とオッサンが数人だった。

ただじゃあ映画は残念なだけの作品なのかと言うとまったく違う。
ジュブナイル映画として素晴らしい出来だった。温泉に昔から伝わる神楽が映画としての骨格を支えているし(TV版にはない)、おそらく原作でもそうであろう秋野真月(通称ピンふり)の存在感が素晴らしい。小学生なのに。まさにライバル。敵と書いて友と呼ぶような奴だ。自分が一番好きなシーンは春の屋女将の関峰子の子供時代。お転婆な峰子が屋根に登るところ。作画が実に生き生きとしてて素晴らしかった。ワンシーンでウリ坊の気持ちが理解できた。

いい映画には必ず「美しい瞬間」がある。ハッと心に刺さる映像が。これは昔からのわたしの持論である。理由は知らん。