「天気の子」を鑑賞する。

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「天気の子」
「天気の子」
配給:東宝
制作:コミックス・ウェーブ・フィルム
原作:新海誠
脚本:新海誠
監督:新海誠
2019年7月19日封切り

「君の名は。」で新境地を開いた新海監督の新作だ。「雲のむこう約束の場所」を観たときの不満をふつふつと思い出したが、手管の多彩になった監督には問題では無かった様だ。なによりあの頃とはスタッフが違う。
異常気象で雨の降り止まない東京。田舎から逃げてきた少年森嶋は新宿で暮らすうち、局所的に天気を変えられる少女天野と出会う。貧しいふたりはその能力でお金を稼げないかと画策するが…。

以下ネタバレあり。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
雨に降り込められた新宿がまるでブレードランナーの様で。ツテを持たない子供に冷たい大人たち。持ち出したお金もあっという間に底を尽き、雨をしのぐ屋根もない。ツラい…ストレスの溜まる展開。救いは森嶋があまり深刻に落ち込まないところだ。どうしようもなくなる前に大人を頼る賢明さもある。須賀や天野との出会いは新宿での暮らしをかけがえのないものと思わせるには十分だったろう。にも関わらず…。
映画では雲を晴らせる天野を晴れ女としてその能力に焦点があたるが、むしろずっと雨ばかりになる天候の方が大問題なのでは。未知の自然現象、雲の上の巨魚の群れを描写しておいて、その解決に話が行かないのは視点が無力な子供である二人に向くから。視野も狭いし、やれることも限られてくる。周囲の大人は常識を振りかざすだけで助けにならない。そりゃ天野を救う為なら東京の一つや二つは水没させるだろう。

人間はずっと雲の晴れない時代を一つ知っている。数十万年に及ぶその間に滅びかけた。第四氷河期という。雨の続く気象を異常だと思うのは人間の都合で、たまたま人類の発展したこの数千年が晴れ間の多い間氷期だっただけだ。このシナリオがまだ身勝手な子供のわがままに思えないのは、そういう背景にもきっちりと筆を取っているからだろう。

これを斬新と取るか、二番煎じと取るかは、観た人のヲタク度によると思う。これが広く一般に受け入れられたら、世の中はちょっと変わったと思えるかな。面白かった。


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