記事タイトル:「死にたいのか、この野郎!」 


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お名前: ななかん   
瞬時、車内蒼然。
見ると40はいってなさそうな親父が、くちゃくちゃガムを噛みながら誰かに
毒づいている。なにか注意されたのが腹立たしいらしい。
ひとしきり一方的に怒鳴り散らしたあと、そそくさ降車した。

「ふ〜ん、ぢゃ殺してもらおうかな。」と思わず口に出してしまいそうになった
自分をぐっと押さえて、思うにあのキレ具合では確かに刑事事件の当事者くらいには
なれそうだ。
よほど鬱屈したものを抱えておるようだった。

己の人生がつまらないものに思え、自己実現には障害が多すぎると考え、
いい加減な人間が気楽に暮らしている様に感じると、不愉快な相手の人生も
そうに違いないと、根拠のない自己投影から衝動的な破戒に至る。

ひょっとして彼は30年振りにチベットから帰国した親友を迎えに行く最中だったかも
知れない。結婚して15年たってやっと授かった子供の出産に立ち会うため、急ぎ
産院へ向かう途中だったのかもしれない。

そんな誰かの夫や恋人や友人や父親を、無残に殴り殺す権利が自分にはあると、
どういうわけか思える人達がたくさんいるわけだな。きっと。

[2003年4月10日 11時32分56秒]

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