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「さんさん録」第二巻 |
全二巻にて終了。
もったいない。
しかし、なんだったのだろうか、この違和感はと思い返すに、
あとがきではスランプ期の作品と本人は自信なさげで、そこかと。
ではいつ頃の作品なら自信満々なのか、と。
この伝でいくと、ご本人にこのバラバラの枝をファッショする意図は
全く無いようなので、それではとても長編をモノするのは無理なのでは、
とか思ったりするのですが、この作品を読む限りでは良い方向なのかな、と。
例えばカバーに隠れる表紙には、乃菜ちゃんの嫁入り姿が描かれている
訳ですが、本編でそれを意識させる掌編は「箱入り娘」のみ。
勝手にさだまさしですよ、これなんか。
思うでしょう、そりゃ。
女の子らしい格好がサッパリ似合わない、ヒマさえあれば虫を集めている、
目つきの悪い少女が、手足が伸びて年相応の背丈になって、じじいは
それをずっと見ているわけですよ。
描きますよ、嫁入り。わかっているぢゃないか、と。
なんでそれがスランプなのか。
鶴子さんの「幸いにして恋も失恋も嫉妬も味わえなかった。」なんちゅう
述懐なんぞ並の男性作家には語れませんよ?
あなたに足らないのはこれらの宝石をまとめあげる額だ。
テーゼだ。
信念だ。
自分の宝石が美しいと信じる心だ。
ジェームズ・ティプトリー・JRも実生活では懊悩に悩まされていたらしいので、
こうのさんの苦悩も解消などされないのかもしれない。
クリエイティブとは頼まれもせんのに、作品のために心血を注ぎ、あまつさえ
命まで落としてしまうような阿呆のこと。
これとても男性原理であろうとは思う。
大抵の女性はこんなやくたいの無いことに命を賭したりはせん。
でもそれでは創作の神が、血が、収まらない、
と思うのだけどなぁ。
[2006年6月29日 10時39分24秒]