記事タイトル:「指輪物語」を読了する。 


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お名前: ななかん   
面白かった。
もっと若い時に読んどけばよかった。
でも若い時では、この全体に流れるやり切れなさは理解できなんだかも、かも、かも。

よく云われるように冒頭からシャイアを抜け出すまでの描写は、冗長に思えて、
大概の読者はここで挫折するらしいが、そこは年の功で乗り切って、裂け谷でのエルロンドの
会議が招集されるに及んで、にわかに緊張する構成の妙。映画版での脚本が慎重に練られている
のがよくわかる。そこから先は怒濤の展開。息つく暇もなく旅の仲間と疾走していく。

そして語られるのはひとつの指輪の「重さ」である。
あとがきでトールキン本人が、物語に寓意を求めてはいけないと語っているのだが、
やっぱりナズグルや指輪が何かを示すものなのでは、といろいろ勘ぐりたくなる。
世界を構築するための小説なので、はっきりと明示されないのだけど、サルマンも
サウロンも決して悪のスピリッツなどではなくて、かつては「賢人」「賢聖」と
称された存在であったらしいこと。
なによりもガンダルフやエルロンドが恐れるのは誘惑に屈服してしまう自分自身なのだ
という事。
よしんばサウロンが滅んだとしても、それは第三紀が第四紀に移行しただけなのだ、
という諦観じみた世界観。補足にその後の旅の仲間の消息が少しく語られているのだが、
まるで祖父の日記を読んでいるかのような風情であった。

サムワイズが肌身離さなかった鍋を、邪魔になるからといって、涙をこらえながら
捨てて行くシーンは実に身につまされた。

いろいろな見方が出来るのは名作の必要条件なのだな。

[2004年8月23日 23時44分12秒]

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