記事タイトル:「俄ー浪華遊侠伝」を読了する。 


下欄へ  
お名前: ななかん   
司馬遼太郎さんの実在の極道を取材した小説。
面白かった。
名を明石屋万吉という。
酒は呑まない。女にも薄い。博打は超がつく下手。
喧嘩になっても自分から手をあげることはない。
看板は命を安売りすること。
頼まれ事は是非を聞かずに引き受ける。
儲けを取らない。
それが自分の看板を磨くと信じている。
こんな極道がいるだろうか?
大阪は民間の力が他所に較べると強いのだろうか。

上州あたりの専業やくざとの違いをお国柄でまとめてしまう
司馬さんの観察が面白い。無為無銭の徒を軽蔑する気風がある。
やる気の無い奴は罵倒される。
そんな街で齢十一歳の万吉が儲けの算段をつけたのが殴られ屋
だったというのがよい。

この万吉の殴られ人生が幕末から明治にかけての激動を背景に
描かれる。
「人生なんちゃあ一場の俄みたいなもんや。」

深く感ずる結末だった。
大正まで生きた万吉の最期の言葉が「ほな、往ってきまっさ」である。
散歩にでも出かけるように死ぬ。
人生を磨き上げた者だけに許される芸当だ。

男たるは、かくありたいものだ。

[2006年5月23日 9時20分16秒]

小説記事一覧に戻る
記事一覧に戻る