「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」3巻を読了する。


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お名前: ななかん   
「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」3巻
「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」3巻

電撃文庫
著者:伏見つかさ
出版:アスキーメディアワークス
販売:2009年4月10日
読了:2010年11月29日
価格:599円(税込)

面白かった。アマデウスな内容。サリエリかお前は、フェイトちゃん。

アニメ版も好評な「俺の妹〜以下略」の原作。
今やすっかりラノベの代名詞、電撃文庫から七巻まで続刊中。
アスキー・メディアワークス刊、作者は伏見つかささん。
かんざきひろさんのイラストがかわいい。
気にはしてましたが、もっぱらアニメ版を楽しんでおります。
先日の放送でこの第三巻の内容が放送され、原作との違いに
憤っておられるマイミクさんが居られたので、拝読。

面白かった。以下ネタバレがありますので注意。










































ケータイ小説の内容が奪われたのではないか、その犯人は?
というミステリタッチから、作品、作風のアイデンティティに
至る後半の畳みかけが良かった。
なかでもフェイトちゃんの動機とその動機に共感しつつも、
「それはそれ」と切り返す黒猫の漢らしさッ。

お兄ちゃんのオタク礼賛はしらじらしいけど、この人物なら
それぐらいは云うかもと思わせた。
なるほど、これは面白い。

対してアニメ版は桐乃のトンデモケータイ小説が大人気!な部分は
華麗にスルーして、そのアニメ化にまつわる顛末である。
アニメのスタッフは「売れる」番組にしようと、原作者の思い入れは
無視して、次々改変してしまう。
そもそもこの本がなんで売れてるのか理解出来ないとまでのたまう。

原作がラノベ業界そのものの価値を問う様な真摯な作りなので、
原作付きアニメ、制作の内幕をさらすような展開は脚本家の倉田さんと
して、原作の真面目さに匹敵するには自分たちの話にしないと、と
思われたのかも知れない。でも番組中で云われる様に、アニメ制作は
集団作業。原作では創作者の矜持が問題なので、深く掘り下げられた
桐乃や黒猫の人物描写が、ここではイタイ原作者とそのツレの話に
格下げされてしまっている。ぼやけてしまっているのだ。
黒猫の鬱屈、桐乃の努力に感動した読者は怒るでしょう、そりゃ。

とは云えアニメ版も大いにありだと思いました。
フェイトちゃんが編集をやってるとか、原作を知ってれば驚きの
くすぐりだし、小説も書いてる脚本家で鳴かず飛ばずとか、そこまで
自虐せんでもと笑えたし。

聞く所によるとアニメ版の次回作は、原作にないと云う黒猫の実家の話を
原作者本人が脚本してるということなので、そのあたりバランスを
うまく取っている様な気がする。

まだまだ続刊してる原作と、最初から期限の決まっているアニメの
差なのではないでしょうか。

と云う訳で大変楽しめました。ありがとうございます、めなぞ〜る♪さん。

黒猫の「自慢じゃないけどね、わたしは友達少ないのよ」
を削ったのは倉田さん、痛恨だと思います。

コメント

>めなぞ〜る♪さん:
いやいや、ほんとありがとうございます。
フェイトちゃんの「こんなことがあっていいんですか!?」の
部分は何度も読み直して泣きました。(´;ω;`)
大体ワナビという呼ばれ方を知らない。
フェイトちゃん如きで廃ワナビなら、わたしはワナビの化石…。(´;ω;`)
伏見さんも一巻、二巻で手応えを感じて三巻では
本音を吐露したんでしょうか。実に真摯でした。
率直に云って面白いです。僕のハートは滅殺されました。わーいヽ(´▽`)ノ

>電友オンラインさん:
そうなんです。そのメタフィクションな部分がアニメ版もありと
思える理由なんです。原作の構造はしっかり踏襲してるのに、
中身は違うという。倉田さん、よく読み込まれてるなぁと。
突っ込みも原作レベルだともっと良かったんですけど…。(´Д`)

>谷淳々さん:
ん〜。この話に関しては原作の方がずっと感情移入したんですけど、
じゃあ原作七巻まで全部読むか?と云う程魅力は感じないんですね。
お兄ちゃんに理解が有りすぎると云うか、いい人っぽいと云うのは
この三巻、アニメでも語られました嫉妬の部分で大分解消されましたけど、
なんか妹をかばう理由が欲しいと云うか‥。(´Д`)

>U(ゆ〜)さん:
桐乃は原作ではツラが見えない分、アニメ以上に傲慢で憎ったらしい奴
ですけど、自分が興味を持ってることには努力を惜しまない熱心さも
併せ持ってるんですね。多分U(ゆ〜)さんが引っかかるのは目上の者に
対する礼節のなさだと思うんですけど、桐乃がああいう無礼な態度を
取るのは極めて近しい相手だけらしいのですよ。
近けりゃ無礼でもいいのかとは思いませんが、兄貴に対する毛嫌いに
なんか理由でもあればわたしももう少し納得出来るんですが。(´;ω;`)

>めなぞ〜る♪さん:
なるほど。巻末のあとがきにも随分書き直したとありましたから、
かなりナイーブな点を突いてたのでしょう。
例えば作品を分捕る方法とか指南しちゃいかんだろう、というのは
ありました。デジタルだとコピーも楽ですし、罪悪感が希薄なんです。
編集部の姿勢などもチェック受けてそうです。
雑誌の編集者には、いい加減な人や山師も多いですし、
出版社自体が盗作上等な世界ですから。

そうそう。編集部訪問には色んな伏線が引いてあったのに、それを
やらないというのは、今後の展開はオリジナルになると云う予兆なのかと。
そもそも沙織・バジーナは本当に中学生なのかと。

プリンの皿を五回叩いてから、なんちゅうネタは倉田さん好きそうなのに。
まったくもって惜しいことです。

>いつろーんさん:
いやいや、いつでもどの話題でも歓迎です。

映像作品と文章作品は最初から別物です。それぞれに得手不得手がある。
文章でなければ味わえぬ面白さもあれば、映像でなければ成し得ぬ説得力
もある。なかなかそこを追求する作品も少ないですが、ラノベは魅力的な
カバーや挿絵の力も相まって、映像化しやすいと思われがちですが、
書いている方々はやはり文章の魅力を信じて書いておられると感じられます。

わたしは「ブギーポップ」シリーズが好きで、上遠野さんの作品はずっと
追いかけているのですが、ブギーポップの映像化で納得出来たのはひとつも
ありません。原作の挿絵を担当された緒方剛志さんの漫画版でも、いまひとつ
でした。ただストーリーを追うだけでは「不気味な泡」と云う存在に説得力が
与えられないのだと思っています。
逆に上遠野さんの作品には多くの音楽や映画や漫画からインスパイアされた
とおぼしき描写が多々見受けられ、その共通点が一見映像化に向いている
様な印象を与えます。最初から映像を意識して書く描写などもあるでしょうが
基本的に文章の醍醐味はそこではないですね。

「2001年宇宙の旅」と云う映画はアーサー・C・クラークの短編「前哨」と
云う作品から起こされ、非常に難解な映画として評判になりました。
その後クラークは脚本から再度長編を書き起こし、映画の中で謎めいた行動
を取るキャラクターの内面を描いて、これまた評判になりましたが、映画に
あった息が詰まる様な緊迫感はそこにはありませんでした。

でも短編も長編も映画もそれぞれにすばらしい作品です。
この関係は非常に恵まれたコンテンツと云えます。

全ての創作物がその様な関係を取れれば尚幸福なことだと思います。

>いつろーんさん:
はい。わたしもアニメの方が出来がいいとか思って見ているわけでは
ありません。地上波はテレビがあれば見れる。追加投資は要りません。
が、電撃文庫はカラーの口絵もあいまってか、600円近くします。
600円あったら昼飯が食えます。それを七回分?
恥ずかしいのですべてを語らせないで下さい。(´;ω;`)

星★★★★★

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