「ゴジラ-1.0」を鑑賞する。 投稿日時: 2023年11月8日 投稿者: ななかん&かりくに 「ゴジラ-1.0」 配給:東宝 制作:TOHOスタジオ/ROBOT 原作:香山滋 脚本:山崎貴 監督:山崎貴 2023年11月3日封切り 映画記事一覧に戻る
鑑賞日:2023年11月7日 おお、足を引っ張る無能が主人公だ! 敗戦寸前の大戸島に死ぬのが怖くて離脱した特攻隊員敷島が不時着した。整備兵長橘は責めなかったが、その晩基地は呉爾羅の襲撃を受ける。零戦の機関砲で攻撃してくれとの橘の懇願を敷島は恐れのあまり手が出せず分隊は壊滅。生き残って東京へ復員したが家は空襲で焼かれ頼みの両親は死没していた。生きる気力も萎え果てた敷島だったがそれでも腹は減る。そんな中闇市で出会った典子・明子親子に居座られ、高い収入を得る為に軍が撒いた機雷を除去する新生丸の仕事に就く。 敷島を演じるのは牧野富太郎先生を演じた神木隆之介さんで脆弱なインテリを見事に演じてイライラさせる。ハスッパな典子を演じるのは「シン・仮面ライダー」で緑川を演じた浜辺美波さんでメーキャップなのか素が昭和なのか、昔の女優然とした落ち着きを見せる。東宝シンデレラなのね、この人。 死に損なった特攻崩れ、と云うと嫌なステレオタイプを感じるが、機雷除去の仕事で一緒になる新生丸のメンバーが映画に張りをもたらす。中でも同じ様にインテリでありながら飄々と任務をこなす元技術士官の野田は山崎映画常連の吉岡秀隆さん。このノホホンとした顔がたまらん。日本に接近する巨大生物の足止めを命じられ向かった先で見たのは更に巨大化したあのゴジラだった。孤軍奮闘する新生丸だったが、あわやと云うところでシンガポールから回航してきた重巡高雄が間に合う。高雄の全力射撃にさしものゴジラものたうつが、怒りが頂点に達したか放射能火炎の一閃で高雄は爆沈。またも生き残った敷島と仲間は東京へ帰還するも緘口令を敷かれてしまう。 このポンコツ木造船新生丸とゴジラの戦い、「ジョーズ」のオルカ号の戦いを彷彿とさせるねぇ。大戸島に現れる最初の呉爾羅もエメリッヒ版ぽいし。カット繋ぎにフェードアウトを入れる趣向も往年の日本映画を思わせる。そして絶対防衛戦を突破しての品川上陸。「ゴジラ」では何度も描かれる光景だが、あの頃の昭和を撮り続けて来た山崎作品ならではの格別さがある。空襲も耐え抜いた国会議事堂前に陣取った戦車部隊からの砲撃に高雄を思い出したのか、放射能火炎で応ずるゴジラ。空中でのそれは核爆弾の炸裂を思わせる激烈さで銀座一帯を薙ぎ払い、典子も爆風に吹き飛ばされる。 政府は進駐軍に武装を許されず、対ソ連を意識した米軍も動かず、ゴジラ対策は民間人の有志の献身に委ねられた。砲も銃も持たない対策本部は動かせる資源の限りを尽くしてゴジラ殲滅に乗り出す。集まってくるのは大戦を生き抜いた軍の士官たちだ。典子を失ってゴジラ必殺を志す敷島は野田のツテで試験機震電を手に入れるが、何年も放ったらかしの機体はガタが来ていた。優秀な整備兵が要る。橘だ。敷島の頭にはそれしかなかった。 燃える展開。誰も死なせんと万全を期した作戦も意表を突くゴジラの進撃に後手を踏む。今作の見せ場はこの海上戦だ。「シン・ゴジラ」では描かれなかった艦隊戦を存分に堪能できる。高雄とか震電とか実在の兵器を使うのも本来なら庵野流と思えるが、オキシジェン・デストロイヤーとかスーパーXとかの超科学に頼らない徒手空拳の戦いの結末や如何に! 面白かった。「シン・ゴジラ」の後は難易度が高いとの自らの発言を乗り越えた山崎監督、天晴れでした。 星★★★★★ 返信 ↓
鑑賞日:2023年11月7日
おお、足を引っ張る無能が主人公だ!
敗戦寸前の大戸島に死ぬのが怖くて離脱した特攻隊員敷島が不時着した。整備兵長橘は責めなかったが、その晩基地は呉爾羅の襲撃を受ける。零戦の機関砲で攻撃してくれとの橘の懇願を敷島は恐れのあまり手が出せず分隊は壊滅。生き残って東京へ復員したが家は空襲で焼かれ頼みの両親は死没していた。生きる気力も萎え果てた敷島だったがそれでも腹は減る。そんな中闇市で出会った典子・明子親子に居座られ、高い収入を得る為に軍が撒いた機雷を除去する新生丸の仕事に就く。
敷島を演じるのは牧野富太郎先生を演じた神木隆之介さんで脆弱なインテリを見事に演じてイライラさせる。ハスッパな典子を演じるのは「シン・仮面ライダー」で緑川を演じた浜辺美波さんでメーキャップなのか素が昭和なのか、昔の女優然とした落ち着きを見せる。東宝シンデレラなのね、この人。
死に損なった特攻崩れ、と云うと嫌なステレオタイプを感じるが、機雷除去の仕事で一緒になる新生丸のメンバーが映画に張りをもたらす。中でも同じ様にインテリでありながら飄々と任務をこなす元技術士官の野田は山崎映画常連の吉岡秀隆さん。このノホホンとした顔がたまらん。日本に接近する巨大生物の足止めを命じられ向かった先で見たのは更に巨大化したあのゴジラだった。孤軍奮闘する新生丸だったが、あわやと云うところでシンガポールから回航してきた重巡高雄が間に合う。高雄の全力射撃にさしものゴジラものたうつが、怒りが頂点に達したか放射能火炎の一閃で高雄は爆沈。またも生き残った敷島と仲間は東京へ帰還するも緘口令を敷かれてしまう。
このポンコツ木造船新生丸とゴジラの戦い、「ジョーズ」のオルカ号の戦いを彷彿とさせるねぇ。大戸島に現れる最初の呉爾羅もエメリッヒ版ぽいし。カット繋ぎにフェードアウトを入れる趣向も往年の日本映画を思わせる。そして絶対防衛戦を突破しての品川上陸。「ゴジラ」では何度も描かれる光景だが、あの頃の昭和を撮り続けて来た山崎作品ならではの格別さがある。空襲も耐え抜いた国会議事堂前に陣取った戦車部隊からの砲撃に高雄を思い出したのか、放射能火炎で応ずるゴジラ。空中でのそれは核爆弾の炸裂を思わせる激烈さで銀座一帯を薙ぎ払い、典子も爆風に吹き飛ばされる。
政府は進駐軍に武装を許されず、対ソ連を意識した米軍も動かず、ゴジラ対策は民間人の有志の献身に委ねられた。砲も銃も持たない対策本部は動かせる資源の限りを尽くしてゴジラ殲滅に乗り出す。集まってくるのは大戦を生き抜いた軍の士官たちだ。典子を失ってゴジラ必殺を志す敷島は野田のツテで試験機震電を手に入れるが、何年も放ったらかしの機体はガタが来ていた。優秀な整備兵が要る。橘だ。敷島の頭にはそれしかなかった。
燃える展開。誰も死なせんと万全を期した作戦も意表を突くゴジラの進撃に後手を踏む。今作の見せ場はこの海上戦だ。「シン・ゴジラ」では描かれなかった艦隊戦を存分に堪能できる。高雄とか震電とか実在の兵器を使うのも本来なら庵野流と思えるが、オキシジェン・デストロイヤーとかスーパーXとかの超科学に頼らない徒手空拳の戦いの結末や如何に!
面白かった。「シン・ゴジラ」の後は難易度が高いとの自らの発言を乗り越えた山崎監督、天晴れでした。
星★★★★★