記事タイトル:「コクリコ坂から」を鑑賞する。 


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お名前: ななかん
「この変な日本はつい最近までほんとうにあったのです、多分。」みたいな。

面白かった。

これまたこまかいケチを付け出すと切りが無いので置いておきますが、
宮崎吾朗監督、今回は本気を感じました。
以下ネタバレ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
冒頭、いかにも絵になりそうな洋館から始まる。
坂の上に建つ洋館。ファンタジックな展開を予想させて、
始まるのは朝餉の仕度である。
前の晩から仕込んである炊飯器。
マッチで火をつけ、材料を並べて、進められる作業に澱みが無い。
遺影に水をあげて、旗を揚げる。
毎日毎日続けている作業なのだとハッキリわかる。
時代は1963年(とは誰も云わないが東京オリンピックの前年であることが
描写されるので、そうであろうと思われる。)。
わたしの生まれた年だ。
朝鮮戦争の特需景気に引っ張られて高度経済成長まっただ中である。

揚げられている万国旗みたいな旗がなんなのかという説明はないが、
途中汽船同士が通信しあう信号旗で、アルファベットを示していることが
語られ、そのことがヒロイン海と同じ高校に通う俊とのロマンスのきっかけ
となっている。
慎重な導入、そして高校での展開。
思いつきや気まぐれでない、よく考えられた筋運び。
なんと真っすぐで伸びやかな高校生たちか。

劇中、カルチェラタンを名乗る部室棟は
これがまた絵に描いた様な馬鹿の巣窟。

どこまでも真面目で主張する事を憚らない学年総会。

激こうのあまり、壇上に駆け上がる新聞部部長。

ああ、なんか懐かしい!
こういう場面と台所の床下倉庫からじゃがいもやたまねぎを取り出す
手つきの描写が並列で描かれる丁寧さ。
絵描きのお姉ちゃん、じゃがいも切るのが下手なんだ。
でも集中してるから声も出せない。こういうところがいい。

部屋に入る時とか膝を落として名乗るんですよ。
洋室だとノックでしょう?
でもふすまが普通だった日本の家ではノックは響かない。
声をかけるのがエチケットだった。
いまやすっかり廃れた感のある風習ですけど。
劇中、海にそれをやらせておいて、慌ててる時には
そこをすっとばして、いきなり開けてしまう。
ああ、そんな時代だったなと思わせる描写でした。

格別の傑作!と評するにはこれらの巧みさを物語のベクトルにまとめ上げる
手腕にいまひとつ欠けるきらいがあるけれども、ジブリ製ジュブナイルに
またひとつ佳作が加えられた感はある。

アリエッティの米林監督とか「俺ならもっといい映画に出来たぜ!」
とか思ってそうだし、ミヤさんは間違いなくそう思ってるだろう。
でも吾朗監督はよく頑張った。偉いと褒めて上げたい。

あとは興収がそれに見合ってくれればよいのだけれど。

[2011年7月23日 17時14分]

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