「劇場版ヴァイオレット・エヴァーガーデン」
配給:松竹
制作:京都アニメーション
原作:暁佳奈
脚本:吉田玲子
監督:石立太一
2020年9月18日封切り
鬼畜なファンにスタジオを焼かれ、多くのスタッフを喪った京都アニメーションの復帰作が公開された。
物語はTV版の後日譚だ。冒頭、祖母を失った孫と母の軋轢から話が始まるが…この亡くなったお婆さんというのが…。TV版でも屈指の名編、第10話「愛する人は ずっと見守っている」のアンその人だった。時代は進み電信電話が通信の主役となり、代書業のC.H郵便社も役目を終えて解散しているが、曽祖母クラーラからアンに送られたヴァイオレットの代書に感動したデイジーは、その痕跡を追い求める。そこで見えて来たヴァイオレット・エヴァーガーデンの後半生とは…。
上手い。この全てが終わったところから話を始める語り口。本当に映画っぽい。TV版でもそうだったけど、数ある京都アニメーションの作品の中でも、このヴァイオレット・エヴァーガーデンは描写が特にくどい。この映画でもそのクドさは健在。ただ大きなスクリーンで観るとそこにも味があって、特に雨とか風の描写が素晴らしい。海風など潮の匂いが漂って来そうだった。この風と雨と波の描写は大きな陰影を映画に与えている。再会の場面で日が沈んだり雨になったりするのは爽快感に欠けるが、意図的な短調なのだろう。なんとなくネオリアリズムな感じがした。この喪失感はスタッフの本音とも思える。良かった。