「君の名は。」
「生まれ変わったら東京のイケメン男子にしてくださいー!」
「その願い、叶えてしんぜよう。キュア、プラパパッ!」
本当に新海さんがこの脚本(ホン)を書いたのか?
無常観と云うかもののあはれと云うか、
「ほんに人の世といふはままならぬものよのう。」
「げにも、げにも。」
みたいな煮え切らん作風で、人間には興味ないんだとばかり
思っていたのに…。
神木隆之介くんはこんな役ばっかだな。
逆か。
こんな役の神木くんばっかり見てるんだな。
以下ちょっとばかりネタバレ。
天頂で崩壊した彗星の核がそんなまっすぐ落ちてくるかなー。
と思いはしたものの、大カタストロフまでは実に楽しめた。
殊に前半のとりかえばや物語のテンポの良さには唖然とした。
主人公二人の生き生きとした表情。
それを支える美しい背景。
場所がズレているだけでなく、時間も微妙にズレていることに
気付くあたりからの断絶と復帰。
正に内的なベクトルから走らざるを得なくなるドラマツルギー。
見事だった。
だけに、隕石落下から変わった未来を生きる二人が出会うまでが、
クドい。
むしろこっちのまだるっこしさの方が本来の新海節とも思える。
でも今までの新海作品なら、自分の常識に押し流されて、相手の名を
問うとこまでいかなかったろう。
観客はこの二人が濃密な時間を育んできたことを知っているんだから、
いきなり抱きついたって文句は言わない。その後、
「えっと…誰だっけ?」でも良かったろう。
新海監督はいっつも自作が不本意な受け取られ方をしてる、実力が
不足してるみたいな事をおっしゃるが、今回のこれはどうだったのだろう。
直球ストレートだったのか、ちょいと粋なフォークボールだったのか。
シナリオが初稿からこの形だったのかが気になるが、
素晴らしい作品だった。
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