「ベイマックス」を鑑賞する。

「ベイマックス」パンフ
「ベイマックス」
配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ
制作:ディズニーアニメーション
原案:スティーブン・シーグル/ダンカン・ルーロー
脚本:ロバート・L・ビアード/ダニエル・ガーソン/ジョーダン・ロバーツ
監督:ドン・ホール/クリス・ウィリアムズ
2014年12月20日封切り

素晴らしい。
ディズニーとも思えん。
なにこの面白映画!
こういうのを観ると、今ピクサーは何をしているのかと思う。
日本へのラブレターみたいな映画だから、
「ニッポン偉い!ニッポン凄い!」と自己拡張を謀っている
ニワカ右翼の皆さんにも受けるンじゃないかなッ。

以下ネタバレあり。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
冒頭からいきなりロボットの野良試合だ。
この国では闘犬や闘鶏の様に、ロボットの
殴り合いで賭け試合が行われている。
金儲けでなく、そこでの勝負にこだわる主人公ヒロ。
工学の天才である彼は自分のアイディアが通用する場が
欲しいのだ。
同じ様に工学の才がある兄タダシは、弟の天分がそんな
ところで使われるのが口惜しい。
諭したところで聞かぬ気の弟を自分の大学のゼミへ連れて行く。

場末でロボットバトルが横行する国だ。
そこには高い技術力の堆積がある。
タダシの大学は科学オタクの梁山泊だった…。

この一連の流れが素晴らしい!
無理な説明もないのに、物語に沿って彼らの背景が逐一
解って行く。

そこでのタダシの研究は人間をトータルにヘルスケアする
介護ロボット。その名もベイマックスだった。

ゼミでロボット工学の先人キャラハン教授に焚き付けられたヒロは、
一念発起して画期的なマイクロロボットの開発に成功する。
だが記念すべきそのお披露目の日、誰よりも彼を信じ、
励ましてくれた、大きな兄、タダシを失ってしまう…。

生きる意味も気力も失くしたヒロの傍らであのベイマックスが起動する。
「こんにちは。わたしはベイマックス。あなたの心と身体をサポートします」

なんだー!これ!素晴らしい!あらかじめ約束された物語!
語るべき時に語られる言葉!いい脚本は全てを凌駕する!

後半、兄の復讐に我を忘れるヒロの暴走と、悪役の悪の理屈がもっと
相似鏡の様に重なってくれると、もう間違いなく本年一の傑作だったのだけど、
もう一歩が足らなかった…。

それでも随所にスタッフの映画への愛、日本アニメや漫画への愛があふれてて、
初めてビッグヒーロー6が結成され、ベイマックスVer2として飛行プロップを
試すシーン。空を飛ぶ快感も然ることながら、足から火を吹く飛行イメージ。
なんでこれが鉄腕アトムで実現しないのかとッ!

心からリラックスしたヒロが足をプラプラさせるのを見て、同じ様に足を
動かすベイマックス。ふたりがバディになったと思えるシーンで、
「ベイマックス、もう大丈夫だよ」を口にすれば全部終わるのだと改めて
語られる流れ。そして絶望的状況で、たったひとつの冴えたやり方を提案する
ベイマックスにヒロがかける言葉は…。

本編中のキックアスであるフレッドが最後に知る真実も美味しい、スタッフロール
後のオマケまでピクサーっぽい見応えのある映画でした。

「さぁ!語ろうではないか、息子よ!」


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「宇宙戦艦ヤマト2199 星巡る方舟」を観てしまいました。

「宇宙戦艦ヤマト2199 星巡る方舟」を観てしまいました。
ご存知の方はご存知の様に、後ろに2199と付くのは
出渕 裕監督による翻案新作のTVシリーズ。その映画版ですね。
再編集版でなく新たに物語を起こしたとの事で行ってきましたが、
以下ネタバレあり。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヤマトが地球に帰ってない!
マゼラン雲を出たとこだって?
その後の話ではないんかいッ!

と云う事は…うわぁ沖田がまだ生きている。
古代守が居る様な気がするって、居るわいな!

ってそう云う話じゃないんだな。
冒頭に空間騎兵隊の斉藤が出てくるから
てっきり「さらば」的な話かと思ったら…。

この話の中ではガミラスとヤマトは講和しているので、
ほぼ無傷で残ったガミラス基幹艦隊と交戦せんで済む。
そこが出渕版で嫌なトコのひとつだったのだけど、
出て来たじゃないかッ。ヤマトを許さぬ漢が!
お前、生きとったんかい、バーガー少佐!

そして不穏な新兵器を携えたガトランティスの先遣隊。
ははん、ここはバーガー艦隊とヤマトが共闘するな。

この妙にものわかりのいい古代進もイヤなトコのひとつ。
古代のダメなとこはみんな南部が背たろうてて気の毒。

ああ、これは「スタートレック カーンの逆襲」と
「ミスター・スポックを探せ!」なんだな。
額に特徴のあるガトランティスの描写なんか
クリンゴンそのままじゃないか。立ち位置的には
ロミュランだけど。

宇宙人です、と云う記号に肌の色を変えるのは
お手軽な描写で、顔にドーランを塗りたくって
済ましていたのは宇宙大作戦の頃からそうでした。
ガミラス人やゼンドラーディ人の肌の色が違うのも
その流れでしょう。
でも日本では敵であるガミラス人の悲痛を描き、
ゼンドラーディ人に至っては最終的には味方に
なってくれます。
スタートレックでクリンゴンが士官として登場する、
ネクストジェネレーションが1987年制作。
世界的にもそこそこヒットした超時空要塞マクロス
愛・おぼえていますかが1984年制作なので、日本通
でもあったジーン・ロッデンベリーはこれを観ていた
のではないかと勝手に思い込んでいます。

生まれる事を製造と云い、生活とは戦争そのものだった
ゼンドラーディが、文化を知って地球人に味方してくれる、
この映画のクライマックスはとんでもないカタルシスが
ありました。

強敵が頼もしい同胞となる、まさに未知の世界です。

七色星団で信頼するエレク・ドメルと共に死ぬ覚悟で
臨んだ艦隊戦。無駄に生き残ったと悔やむバーガー少佐は
果たして宿敵ヤマトを前にして何を思うか。

戦馬鹿が死地を見つける、的な話は泣けますわい。
しかもその馬鹿に戦以外の生き方を示す。

正直沖田艦長が艦隊戦を前に病床から立ち上がった時は、
バーガー艦隊を撃てと命ずるのかとハラハラしましたが、
ロケットアンカーによる艦艇振り回しとか新TVシリーズでは
カットされた旧シリーズの名場面も再現し、あっちこっちに
いやらしい気配りを見せる出渕監督でした。

だから面白かったですって!


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「インターステラー」を観てきました。

月末に「ベイマックス」が封切られると云うので
「インターステラー」を観てきました。
えっと…出来の悪い「惑星ソラリス」?
そう云えばクリストファー・ノーラン監督の映画、初めて見たな…。
いや悪い映画ではなかった…。何が噛み合わないのかな。
ハンス・ジマーさんの無闇に感動的な劇伴?
冒頭のインド空軍のドローン…どうもあれが気になって。
前世紀のテクノロジーが失われつつあるエピソード。
なんか他に描き様はないものかと。

以下いささかネタバレ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局、親切な宇宙人は居なかったって話だよね。
ワームホールを開いたのも無限図書館を開設したのも。
同一時空に同程度の文明が存在する可能性は希有に近い、
と云う計算があるそうで、そうでない場合を考えると、
相手が時間を超越した五次元人、もしくは元地球人と云う。
つまりここで云う「愛」はクーパーやマーフィやブランドや
マンのそれと「彼ら」の動機が一緒なのだと。

「惑星ソラリス」はタルコフスキーさんの映画としては
みっともないくらい噛み合わない映画で、であるが故に
一般的でもあるのだけど、あの映画をダメにしている
科学がここでは全面肯定されている。
ブランド教授やマン博士の様に、使い方を間違っている
例も描かれてはいるけれど、科学的思考が人類を救うのだ、
とする信頼に揺らぎはない。

パル版「地球最後の日」では巨大遊星の接近で住めなくなる地球を
捨てて新天地へ向かうロケットに頼もしさを覚えたものですが、
こうもあっけらかんと見捨てられると…。

そもそも砂をまき散らすストームは温暖化の結果なんじゃないの?
農作物に蔓延する疫病も実は遺伝子操作の結果だったり?
「俺たち農夫は」とのたまうクーパーがドローンを仕留める為に
トウモロコシを4WDでなぎ倒して行く姿は、とても食料危機で
戦争まで起こした人達の価値観と思えません。

ユーモアを解するかの様な超AIを置き去りにして観測させるとか、
おいしそうなネタがあれやこれやと散りばめられてても、
己の信条を微塵も疑わない、実にアンクルサムなクーパーが
かなりの部分を台無しにしてる。

あと秒針のモールスで父の帰還を悟ったマーフィが兄を
抱きしめるシーン、あそこで殺されてもおかしくないと
思うのですが、全人生をプランAの実行に捧げた彼女の
末期に涙したので、許したいと思います。

いや、だから面白かった、ですって。


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